掛川深蒸し茶の歴史と健康効果

深蒸し製法とは?3倍の蒸し時間で茶葉のうま味を引き出す
深蒸し製法は静岡県の牧之原で誕生したといわれ、元々は荒れ地だった牧之原で育つ肉厚で渋みの強い茶葉を美味しく飲むために考案されました。通常よりも2~3倍はど茶葉を蒸すことで葉の芯まで熱を通し、渋味・苦味を減らしてまろやかな旨味を引き出すことができます。宝和園でも1960年頃から深蒸し製法を導入。太陽の光を十分に浴びて肉厚に育った掛川産の茶葉を、農林水産大臣賞受賞茶師の岡本が濃厚でコク深い味わい深い緑茶に仕立てます。
掛川深蒸し茶がもたらす驚きの健康効果
深蒸し茶は湯を注いだ時の水色が鮮やかで濃い緑色になるのも特長です。長時間の蒸し工程によって茶葉の細胞膜が壊れ、葉肉が粉状になるため、抽出時に微細な茶葉の粒子が湯飲みに溶け出します。通常よりも長く蒸すことで、お湯に溶け出す栄養成分が普通の煎茶より多いという大きな特徴があり、湯や水に溶けにくい成分を含む微粉状の茶葉も一緒に飲むことができます。
カテキン・テアニンなどのお馴染みの緑茶の健康成分をはじめ、抗酸化作用のあるβカロテン、血行促進作用や免疫機能改善効果のあるビタミンE、腸内環境を整え、デトックス効果があると言われるクロロフィルなど通常は茶殻に残りがちな成分までまるごと体内に取り入れられます。
「がんによる死亡率」が日本一低い掛川市
こうした栄養成分の相乗効果により、深蒸し掛川茶は生活習慣病の予防にも役立つと考えられています。実証的なデータとしては、人口10万人以上の市町村で「がんによる死亡率」が日本一低いのは掛川市であり、高齢者の医療費も全国平均より20%以上も低いことがテレビ番組で紹介され大きな話題となりました。日常的にお茶をよく飲む緑茶産地が軒並み低いがん死亡率を示す中でも掛川市の数値は突出しており、深蒸し掛川茶の健康成分との関連が示唆されています。さらに、掛川市民を対象に国の研究機関や大学が行った実験でも、緑茶の継続的な摂取がメタボリックシンドロームや動脈硬化の改善・予防に有効であることが確認されました。このように、掛川深蒸し茶は美味しくリラックスできるだけでなく、科学的にも裏付けられた抗酸化作用や生活習慣病リスクの低減効果が期待できる「健康にやさしいお茶」といえるでしょう。
茶草場農法とは?掛川茶を支える世界遺産の伝統農法
掛川深蒸し茶の高い品質を陰で支えているのが、「茶草場農法(ちゃぐさばのうほう)」と呼ばれる伝統的な農法です。茶草場農法とは、茶畑の周辺に生えているススキやササなどの在来の草を毎年秋から冬にかけて刈り取り、乾燥・細断したうえで茶畑の畝間に敷き込むという農法です。
敷き込まれた草はやがて分解して有機肥料となり、土壌に養分を与えます。また、草を刈り取る場所のことを「茶草場(ちゃぐさば)」と呼びます。この農法はかつては日本各地で見られたものですが、化学肥料や近代農法の普及に伴い徐々に姿を消し、現在では主に静岡県の一部地域(掛川市や周辺市町)などごく限られた地域で継承されているのみとなっています。
掛川市では約160年以上前からこの伝統農法が受け継がれ、今も現役で活用されています。農業と環境保全の両立を実現した持続可能な伝統農法として国内外から注目され、2013年5月に国連食糧農業機関(FAO)の「世界農業遺産(GIAHS)」に認定されました。

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